『「学力」の経済学』読了。今からでも親の力でなんとかできることもある!(たぶん

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読書レポート

「学力」の経済学』という本を読みました。

2015年に発行された本なんですが、最近気になって、読んでみました。

ちなみに、わたしの子どもは中3男子で、高校受験が控えております。

もうだいぶ子が大きいので、育児本は「今さら読んでも仕方ないかな・・・」と思うものも多いんですが、『「学力」の経済学』は、今から読んでも十分に参考になりました。

この本は教育経済学者の方が書かれた本ですが、「経済学」と言ってもお金の話ではありません。
お金の話も出てきますが、「どんな教育にどんな効果があるか」という話がメインです。

教育の手法やその効果については、教育評論家などが経験則を頼りに語ることが多いですが、この本の最大の特徴はエビデンスをもとに語られていることです。

ここでは、わたしが参考になるなとメモした箇所について、自分の感想と共に掲載しておきます。

教育経済的に正しい「ご褒美」の設計

41ページ。

ご褒美は

  • インプットに対して、
  • すぐに与える

たとえば、「1時間勉強したら、終わった直後にお小遣いをあげる」というやり方です。

アウトプットに対して、時間が経ってから与えるのはNGです。
たとえば「テストで良い点をとったら、次の誕生日にお小遣いをあげる」とか。

これは、感覚的にそうだろうなと思っている人は多いと思いますが、特に「インプットに対して」というのが重要だと思います。

つい、テストの結果などアウトプットに対してご褒美を設定しがちですよね。
そうじゃなく、「1時間勉強したら」とか「この本を読んだら」とか、インプットに対してご褒美を設定するようにしようと思います。

自尊心と学力の関係

46ページ。

自尊心は学力と相関関係にあるが、因果関係としては「学力が高いから自尊心が高い」

成績が悪い子に対して自尊心を高めるような働きかけをしても、成績が悪いことを肯定することにしかならないって感じなんですかね。

むやみに自尊心を高めようとするのではなく、その子がやる気になるような声かけが必要なんでしょうね。

褒め方で気を付けること

51ページ

能力ではなく、具体的に子どもが達成した内容を褒める

能力を褒めるのって簡単なんですよ。
「頭いい!」「天才!」とか。
あと、「あなたはやればできる」とかね。

一方で、具体的に子どもが達成したことを褒めるには、注意深く子どもを観察しておかなければなりません

「今日は1時間も勉強したんだね」とか「今月は1回も遅刻してないね」とか。

ほかにも「丁寧さ」「正確さ」「早さ」など褒める基準となる切り口はいろいろあるんですが、それらのアンテナを張り巡らして、子どもを褒めたいなと思います。

テレビゲーム、1日に1時間程度なら

57ページ。

テレビゲームは

  • 1日に1時間程度ならゼロと同じ
  • 2時間を超えると悪影響

とのことでした。

「ゼロと同じ」と言ってもまったく同じというわけではありませんが、ほとんど影響がないようです。
まあ、そりゃそうかなと思いますが、「2時間を超えると悪影響」という点は気を付けたいですね。

ゲーム機によっては親のほうで制限が設定できるはずですし、スマホでも、なにかしら制限する方法はありますよね。

iPhoneなら、設定の「スクリーンタイム」から制限可能です。

母が娘に勉強するよう言うのは逆効果

60ページ。

お手軽なものには効果がないというくだりで、「勉強するように言うのは効果がない」とありました。
それどころか、「母が娘に」言うのは逆効果になるのだとか。

ではどうすればよいのか?

お手軽な方法では効果が無く、結局は「隣について勉強を見る」など、手間も時間もかかるようなやり方こそが効果的ということでした。

それも、娘なら母親が、息子なら父親が、つまり同性が関わるほうが良いそうです。

ついでに、必ずしも親である必要はなく、祖父母や兄弟などでも良いとありました。

さらに、学校や塾、家庭教師に頼っても良いのではないか、とも書かれていたので、うまく周りを頼りつつやっていけばよいのだなと思いました。

習熟度別学級は学力が低い子にも有効

68ページ。

友達など周りから受ける影響のことを「ピア・エフェクト」といい、たとえば同程度の学力をもつ子どもたちはお互いにプラスの影響を受けるそうです。

逆に、学力が大きく違う場合はマイナスの影響を受けるとのこと。

また、問題児から受ける悪影響も大きいようで、問題がある子のケアは、周りの子たちのためにも速やかにおこなうべきとのことでした。

そういう意味では、同程度の学力をもつ子たちを集める「習熟度別学級」はピア・エフェクトのプラスの面を発揮できる方法なんですね。

日本の公教育にもっと習熟度別学級を取り入れられれば、勉強が苦手な子でも意欲を失わずに勉強できるんじゃないかな、なんて思いました。

親ができることとしては、塾に入れるのであれば習熟度別にクラス分けされているところを選ぶとか、無理にハイレベルな塾に入れたりせず子どものレベルにあった塾を選ぶ、などの対応がありますね。

投資の収益率がもっとも高いのは就学前教育(幼児教育)

76ページ。

人的資本への投資としてもっとも収益率が高いのは、就学前教育

わたしは、大きくなってからお金をかけるほうがいいんじゃないかと思ってたんですよね。
「もともと頭の良い子はあとからいくらでも伸びるし、そうでない子はどこかで頭打ちになるだろうから、むやみに幼児教育を頑張っても効果は薄いのでは?」と。
違ったので少しショックです。
息子にももう少し投資すればよかった・・・。

けど、ここでいう「投資」は、教育にお金をかけよという話ではなく、しつけや体力・健康など学力以外の部分も含めての話なので気を付けてください。

教育の収益率を伝えると学力が伸びる

107ページ。

教育に関するさまざまな政策について書かれているのですが、その中でもっとも効果が高いのがこれなんだそうです。

教育の収益率を、親と子に伝える

分かりにくいですが、要は「高卒と大卒ではこれぐらい生涯収入が変わる」のように、教育を受けることの経済的な価値を伝えるってことです。

たったそれだけで学力が上がるそう。

まず親が学び、教育の収益率を子どもに話せるといいかもしれませんね。

逆に、コスパの悪い政策としては「少人数学級」が上げられていました。
少人数学級で子どもの学力が上がらないわけではないようですが、コスパが悪い政策を推し進める前に、ほかにできるもっとコスパが良い方法を採用したらいいのに、と思います。

前述の「習熟度別学級」はコスパの高い方法にも関わらず、日本では積極的に採用されていませんしね。

日本では、こうした研究データをちゃんと検討せずに政策が決められているような。

親がちゃんと学ばず学校に任せっぱなしにしていると、子どもの教育を受ける権利が脅かされてしまうのだな、といったことも感じました。

中3時点の学力は35%が遺伝

119ページ。

中3時点での学力は、35%が遺伝の影響、34%が家庭環境の影響(残りは「その他」)

わたしは「意外と低いな」と思いました。

まあ、家庭環境と言ってもだいたいは親が育った環境と似たような環境になりがちだとは思うので遺伝・家庭環境ひっくるめて親の影響がかなり大きいということには違いありませんが。

でも遺伝の影響がこの程度で、家庭環境の影響も同じぐらい大きいのであれば、家庭環境のほうをしっかり整えていきたいなと思えました。

わたし自身はあまり手をかけてもらっていないため子どもに対して何をしてあげればよいのか未だに手探り状態ですが、あきらめずに考え続けたいです。

「平等」におこなわれた教育の問題

129ページ。
133ページ。

平等って一見良いことのように思えますが、そうとも限らないんですよね。

たとえば昔、週休2日制が導入されたときも、みんな平等に土曜日が休みになりましたが、学歴の高い親はその分学習費の支出を増やした(子どもの勉強時間を増やした)そうです。
学歴の低い親はそのような行動はとらないので、結果として子どもの学習時間に差ができてしまったとのこと。

このように、平等におこなわれたことが、かえって格差を大きくしてしまうことがあるんですね。

また、平等を重視した教育によって、親切さや思いやる気持ちが育たない、という話もあるようです。

たとえば「みんなで手をつないでゴールする」みたいなやつがありましたよね。

そういう平等重視の教育は「みんな同じ」という扱いをしますが、それって頭の良さや運動神経の良さなどの能力の差をないことにしてしまっています。

すると、「能力には差がない」というのが前提の考え方になり、できない子がいても「能力は同じなんだから、あの子ができないのはあの子の努力不足が原因だ」ということになっちゃいます。

実はわたし自身も、「人間の能力には大きな差はないはずだから伸びるかどうかは本人の努力次第」だと昔は思っていました。
恥ずかしいことです。

本当は、人それぞれ能力には差があって向き不向きもある。
ということを当たり前だと思える教育が、必要なのではないかと思います。

就学援助の利用者率は約16%

130ページ。

2012年には就学援助の利用者率が約16%になったと書かれていましたが、わたしが調べてみると、その後も15%台で推移していました(2017年まで)。

わたし自身も前職のときは母子家庭で年収も低かったため就学援助を利用していましたが、こんなにも多いんですね。

東京や大阪では3割近い利用者率なのだそうです。

子どもの学力は、親の学歴や収入との因果関係が大きいわけですから、子どもの貧困問題がいかに大きく、深刻な問題なのかが分かりますよね……。

わたしはお金のない家で育っているわりに学力が高かったので、若いときはつい努力論にいきがちでしたが、よく考えたら家庭環境によるハンディキャップはめちゃくちゃ大きいと、だんだん痛感するようになりました。

恵まれない子にも教育の機会が行き渡る国になってほしいな。

いい先生に出会うと人生が変わる

142ページ。

「子どもの学力には家庭の資源が大きく影響」と、学校にできることはあまり無いような記述もありますが、「いい先生」の存在は、そうした家庭環境や遺伝の問題を解決できるんです。

だからこそ教員の質が大事とし、教員の質を高める方法についてもいろいろと書かれていますが、親としてできることはなんでしょうか?

学校の先生を選ぶことは、基本的にはできませんよね。

教員の質の平均レベルが高い学校を受験する」ということぐらいしかできないと思います。

地元の公立に行く場合は、「荒れた地域ほど有能な教員が配置される」ということがあるようですが、優秀な教員に出会わせるためにわざわざ治安の悪い地域に引っ越すのは本末転倒な気もします。そもそも何をもって有能とするか、という点でも議論の余地がありまくりですし。

となると、地元の公立に行かせている親としてできるのは、子どもの担任やその他関わる教員がどんな人なのかを情報収集するとか、塾や家庭教師など外部の良い先生を探してくる、という感じですかね。

もちろん子どもとの相性の問題もありますから難しいですが、もし良い先生に出会えたらラッキーだな、という程度に考えておくほうが良さそうです。

まとめ

日本の教育は、そこまで悪くないと思っていますが、まだまだどうにかできる部分もたくさんあると思います。

この本を読むと、もっと経済学的視点で教育を捉えたり、エビデンスに基づいた施策をとったりといったことがされてもいいんじゃないかと思わずにいられません。

とはいえわたしはいち保護者にすぎませんから、親としてできることをやっていくしかないです。

親も、どうしても自分の経験だけで教育を語りがちですが、雰囲気や印象といった曖昧なものではなく、なるべく科学的にとらえて対応していきたいですね。