秋本治先生になりたかったわたしが「秋本治の仕事術」を読んで夢をあきらめた話

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読書レポート

「こち亀」の作者として知られる秋本治先生が、ついにビジネス本を書かれました!!

この本の副題にあるとおり、秋本治先生はこち亀を40年間休まず連載されてきたすごい方。

「ストックがあるから原稿を落とすことがない」
「アシスタントは社員として雇い、タイムカードで勤怠管理している」

などのエピソードは知っていましたが、そんな仕事術が一冊の本にまとめられるなんて、贅沢な!!

わたしは、働く人間として、秋本治先生をめちゃくちゃ尊敬しておりまして、「秋本先生みたいになりたい」と憧れてきたのです。

しかし、結論から言うと、「無理や。わたしは、秋本先生にはなられへんわ。」ってなりました。

わたしも仕事に関してはけっこうストイックなほうですし、前倒しで仕事するから忙しいわりに余裕があるほうですが、
一方で、秋本先生とは真逆のところもめちゃくちゃ多いな、というのが、本書を読んで感じたことです。

※かなり長くなっちゃったので、気になる部分だけ読んでいただければと思います

秋本治先生との共通点

まず、読みながら「わかる~!」「わたしも同じです先生!!」ってなったところ。

自分の中で具体的に考えて結論まで導き、形にしたうえで人に相談を持ちかける

26・27ページ。

口だけで「いいもの描きたいですね」じゃ、何も見えない。

ですよね。

相談受けるときも思うんですけど、「どうすればいいですか?」じゃ、何も見えないんですよね。

「わたしはこうしようと思ってるんですけど、どう思いますか?」って聞いてもらいたいもん。

わたし自身も、人に対して雑な相談をしないようにしています。

とっとと見切りをつけて次に移るくらいのタフさが、人生には必要

34・35ページ。

本人がいくら努力しても、ダメなものはダメということも確実にあるわけですから。

ほんまそれ・・・。

あと、この部分。

また、本来は才能があるのに、それをうまく生かし切れていない人もいます。僕は、自分の才能を生かすためには、客観的な他人の声にしっかりと耳を傾けるべきだと思っています。自分の才能は、本人がよくわかっていないことも多いのです。

「自分はこうだ」「こういう人間だから」と思い込んでしまって、客観的な意見に耳を貸さない人に、わたしはなりたくない。

信頼すべきパートナーを見つけておく

37ページ。

そうはいっても、悩んでいるときは多くの人が冷静さを失っています。ダメだダメだと思い込むことで選択肢を狭め、自分自身を追い込んでしまうこともあるでしょう。そうならないためには、常日ごろから、自分を客観的に見る癖をつけておくといいのではないかと思います。あるいは、肝心なところで冷静な意見をいってくれる、信頼すべきパートナーを見つけておくというのもひと つの方法です。

わたしはどんなときでも客観的な視点を忘れないように意識してはいますが、とはいえ、客観的に自分を見ると「だめだ、冷静さを失ってる」と自覚できるだけで、にっちもさっちもいかないこともあります。

できることと言えば、冷静さを失っているときには大きな決断をしない、ということぐらい。

けど、「信頼すべきパートナー」がいたら、事態はだいぶ違ってきます。

わたしも、仕事に関しては、信頼する人たちの声に何度も助けられているんですよね。

ただプライベートではそういう人がいないというか、自分がうまく頼れていなかった気がするので、改善していきたいところです。

みんなでがんばろう

44ページ。

マンガは一人でがんばる職人のような仕事ですが、意識としてはみんな一緒に仕事をしている仲間。みんなでがんばろうと思っていた方が、ライバルを蹴落としてのし上がってやろうという考えよりもよっぽど建設的だし、気持ちよく仕事ができるのではないかと思います。

わかる~。

なんか、やたら敵視してくる人とかいますが、あれはなぜ?
わたしはみんなでがんばりたい派です。

ピンチはチャンス、というのは間違いなく真実

50ページ。

「落ちても文句はいわないでくださいね」という形で承諾しましたが、それを誓約書にしてハンコでも押してもらおうかと思うくらいに“ヤバい”仕事だったのです。
でも結果は、なんとか乗りきることができました。毎日、朝5時に起きてネー ムをやるなどスケジュール管理をさらに厳しくして、やりきったのです。やっている間は、大変ではあるものの緊張感があって、いま考えるとピンチを楽しんでいたような気もします。
そして、この体験は大きな自信につながりました。『こち亀』の連載終了後、僕は新しいマンガを4誌に連載するという仕事をはじめましたが、ピンチを乗りきったこのときの体験があったからこそ、やろうと思ったのです。

これは、連載35周年のときに、記念としてマンガ13誌に同時掲載するという企画を受けたときのエピソードです。

想像すればするほどに意味わからん企画なんですが、これができてしまうのが本当にすごいですよね・・・。

わたし、「ピンチはチャンス」と思っているし、ピンチを楽しむという感覚もすごくわかるし、そういう経験が大きな自信につながるという点も大いに共感するのですが、

レベルが違いすぎて・・・。

けど、わたしも過去の仕事ぶりを振り返ると「よくやってたな・・・」と思ったりするので、またそんなふうに、バリバリ働きたいなーとも思います。

もちろん、急に速くすることはできません

66ページ。

不思議なもので、終わりの時間をこんなに繰り上げ、マンガを描く時間を減らしても、できる仕事の量は変わりませんでした。「2時までに終わらせればいいんだ」という気持ちを切り替え、仕事のできる時間を短く設定してしまえば、おのずと仕事のスピードを速めていけるものなのです。
僕もアシスタントも、昔に比べると描くスピードはかなり速くなっていると思います。もちろん、急に速くすることはできません。マラソン選手がタイムを少しずつ縮めていくのと同じ感覚で、調整しながら少しずつ速めていった結果です。

秋本先生は勤務時間を9じから19時まで決めているという話なのですが、肝に銘じるべきなのは、ここだと思います。

「急に速くすることはできません」
「調整しながら少しずつ速めていった結果」

わたしたちは、すごい人を見るとすぐに、「秘訣」だの「テクニック」だのを知りたがります。

でも、今すぐできるようになる魔法のようなテクニックは、基本的にはないんですよね。

今すぐ痩せるとか、簡単に痩せるとかも・・・。

わたし自身も仕事は早いほうですが、いきなり今のスピードでできたわけじゃないので、「安易な方法を知りたがって質問してくる人」には、げんなりしちゃいます正直。

ちなみに魔法的テクニックとしては、このブログも、引用したい部分を撮影して、Googleドキュメントで自動文字起こししたのちコピペしています。らくちん。

話をしているだけではネームは一歩も進みません

85ページ。

いくら話していても結論が出ない場合は、話をしているだけではネームは一歩も進みません。だから僕は、互いの意見を半々で反映させた折衷案をとにかく描いてみて、できたネームでもう一度判断してもらいます。納得はできなくても、相手の意見を尊重してとりあえずネームを進める。
議論するなら、その後もう一度やる方が、ずっと建設的なのです。

本当にそのとおりですよね。

あーだこーだ言ってるだけで全然物事が進まないのって、わたしはすごくストレスが溜まります。

そんなふうにこねくり回していればいつかは100点のアイデアが出てくる、と思い込んでいる人もいそうですが、多分、それは無いと思います。

とりあえず作ってみれば、それに対する意見が新たに出てくる。
何も作らずあーだこーだ言ってるだけでは絶対に出てこないようなアイデアも出てくる。

無茶ぶりの仕事も相手の事情を察し、冷静に対処する

100・101ページ

突発的な急ぎの仕事は、頼む方も言いにくそうにしているものです。そこを「大丈夫、大丈夫」と引き受けることによって、その人との関係性も向上します。
無茶な仕事を振ってくる人も、その人なりの事情があるはず。別に怒るようなことではありません。相手の事情を察して受け止め、冷静に対処できるように、あらかじめこちらが余裕を持っていればいいだけなのです。

無茶ぶりされると怒りたくなるものかもしれませんが、わたしはむしろチャンスのようにとらえてしまいます。

「ほかにこの仕事を受けられる人はいないだろうから差をつけるチャンス!」みたいな。

そして、引き受けたことによって相手との関係性が向上する経験も何度もしてきました。

ただし、毎回無茶ぶりしてくる人は例外です。
これは単に、本人のスケジュール管理力に難ありだったり、わたしへのリスペクトがなく下に見ていたりっていうケースなので、取引する価値はありません。

冷静でいられるのは、ネットでの評価をほとんど見ないから

106ページ。

僕がこんなふうに冷静でいられるのは、ネットでの評価をほとんど見ないからかもしれません。ネットのいわゆるアンチの声は純粋な批判の領域を超え、誹謗中傷の類も多いという話を耳にします。モノをつくる人間が、エキセントリックな誹謗中傷に触れるのは、あまりプラスにならないと思います。
その点、昔ながらのファンレターは本当にいいものです。わざわざ切手を貼り、ポストまで行って手紙を送ってくれるのは、僕の作品を本当に好きでいてくれる人ばかり。励みになるような嬉しい言葉、そして作品づくりの参考になる前向きな意見が多いのです。

純粋な批判・批評であればまだ耳を傾ける価値もありますが、残念ながら、ネットでは論点がずれたトンチンカンな誹謗中傷や、イライラしてる人の八つ当たりみたいな暴言も少なくありません。

わたしも以前は「エゴサ」をしたり、自分の記事につく「ヤフコメ」を読んだりしていたのですが、バカらしくてやめました。

わたし、けっこうまともに傷つくんです。
だからはじめから見ない。

まともに受け止める価値が無いと分かっていても傷つくので。
わたしが「なつみと」という、エゴサしにくいライター名に変えたのもこれが理由。

正確性は置いておき、とりあえず叩き台をつくることが肝要

130・131ページ

いい加減なことが嫌いな几帳面な性格の人は、作業のひとつひとつに全力を注ぎこみ、各段階で正確無比なものをつくろうとしてしまうかもしれません。それを神業のようなスピードでできる人なら構わないのですが、僕のような平凡な人間がスピードを求める場合、正確性はとりあえず置いておいて、先に進めることこそが重要だと思っています。チェックして直すのは、後からだってできるのですから。

わたしは叩き台を作っているときが一番楽しいタイプなんですが、その叩き台は、正確さや緻密さ、美しさなどからは程遠いものです。

「話をしているだけではネームは一歩も進みません」のところと同じで、なんにも作らないままあーだこーだ言ってても、全然進まないじゃないですか・・・。

とにかく、雑でもいいから作る。

わたしと一緒に仕事をしたことがある人であれば、わたしがとにかくすぐ叩き台を作ることや、その叩き台がものすごくグチャッとした雑なものであることもご存じでしょう……。
(グチャッとしてても、分かりやすさ・シンプルさは意識していますが)

新たな一歩を踏み出したいときはとりあえず具体的な成果をつくる

174~177ページ。

自分の仕事の内容を変化させたいとき、新たな一歩を踏み出したいとき、そしてその変化を周囲に認めてもらいたいときは、とりあえず具体的な成果をつくり、見せてみるというのが最良の方法ではないかと思います。

ここまででも何度も出てきたとおり「とりあえずやってみる」という話なんですが。

新しいことを始めたいときも、「とりあえず作る」なんですよね。

「こんなことがやりたいんですよね~」と言ってるだけでは基本的にだめ。
(でも言っておくとチャンスが舞い込んでくることもあるから、とりあえず口に出すのも大事)

秋本治先生と自分が違いすぎたところ

ここからは、「わたしと全然違うなー」「真似できる気がしない」など、わたしとの違いを痛感した部分を。

集中力を切らさないコツは 仕事を終えた次の日も普通に仕事をすること

30ページ。

何事もなかったかのように、変化なくずっと続ける。これこそが集中力を持 続させるコツなのかもしれません。一週間も休んでしまったら、きっと集中力を元どおりに回復させるまでに、かなりのロスタイムを持つことになってしまうでしょう。

わたしの場合、ひと仕事終えるごとに休みたくなります。
というか、休みます。

「淡々とやる」っていうのが苦手なんですかね・・・。

ただわたしの場合「休み」と言っても結局「読書(インプット)する」「フォルダの整理をする」など、つい仕事っぽいことをしてしまう習性を持ってまして、それで気分転換ができちゃうので、それはそれでいいかな、という気もしています。

僕は不規則な生活をしたくてもできないようです

69ページ。

逆をいえば、僕は不規則な生活をしたくてもできないようです。土日でさえゆっくり寝ていることができず、いつもの時間にピタッと起きてしまいます。

わたしは、寝るのが大好き!
放っておくと、生活リズムはめちゃくちゃになってしまいます。

さすがにこの年になると、不規則な生活のデメリットも分かっていますし、まあまあ規則正しい生活をしていますけどね。

フリーランスになったはじめの数年は、時間に縛られないことがうれしくて「朝方まで働いて昼過ぎまで寝る」みたいな生活をしたこともありますが、いろいろ不具合があるし、今は普通に朝起きて夜寝てます。

秋本先生のように、ナチュラルに規則正しい生活ができる人には憧れる・・・。

けど、以下の点はすごく共感しました。

僕は高校生のころから、マンガの同人誌をつくっていました。同人誌なのでそんな必要はないのですが、一人で勝手にメ切を設定し、一人でがんばって守っていました。

わたしも、勝手に締め切りを設定して勝手にがんばるタイプです。
(そして、それが守れなかったりすると勝手に落ち込んでしまうのをどうにかしたい。)

仕事でたくさんのことを抱えてしまったら少し寝かせるといい結果につながる

119~123ページ。

これは、わたしも見習おうと思ったところ。

何かをたくさん背負いこんだときは気持ちも昂ぶっているので、無理に処理してもあまりいい結果につながらないことが多いものです。そんなときは、とにかく一旦荷物を降ろし、しばらく横に置いておくことです。
「後で片付ければいいや」というズボラさも、少しは持っていた方が生きやすいのではないかと思います。

具体例として、こち亀の「希望の煙突」という話を書かれたときのエピソードが出てきたのですが、たくさん取材して、たくさんの情報や資料ができたけど、情報量が多すぎて、冷静になるまで半年ほど寝かせたとのこと。

わたしも、情報量や書きたい衝動に圧倒されすぎて、結果的に時間をおいておくことはあります。

でも、それはあくまで結果的にということなんですよね。

今後は、意図的に寝かせるということもできたらいいなと思いました。

たしかに、寝かせたほうがいいことって、けっこうありますもんね。

頭の中で準備をして座ったら仕事するだけ

148ページ。

座ったら描く。この名言は、尊敬するさいとう・たかを先生の言葉です。座ったら仕事をするだけ……、非常にシンプルですが、漫画家だけではなくあらゆる仕事に使える心構えなのではないかなと思います。

これができるかどうかで、仕事の効率とか生産性って、全然違ってきます。

わかってるし、わたしも調子がいいときはこんな感じなんですけど、調子がくずれるとできなくなるんですよね・・・。

あと、わたしはさいとう・たかを先生も大好きなので、お名前が出てきてテンションあがりました。

座ったら仕事するだけ。

がんばります。

僕は“出されたもの”は何であれ、こなしていく人こそが、本当の大人だと思っています

161ページ。

僕は“出されたもの”は何であれ、こなしていく人こそが、本当の大人だと思っています

これは、全っ然、共感できない!

けど、「すげー……」って思った箇所。

わたしは、ここまでできてないよなー。
できてないけど、できる自分になりたいんだろうな。

左ききのエレンの、このシーンを思い出した。

左ききのエレン

↑これは原作版の17話(3巻)。

nifuniさん作画のジャンプ+版でも3巻に掲載されている名場面です。

出されたものを何でもこなしていく大人、憧れるなー。

明るく笑って生涯現役でいることが僕の人生の目標

184・185ページ。

さいとう先生もちば先生も、いまも精力的に執筆されているので、たまにゴルフで外の空気を吸うことを、何よりも楽しみにしているのだそうです。先輩方と一緒にいると、本当に幸せな気持ちになります。
こうしたすごい先輩たちが前にいてくれることで、僕はとても大きな安心感を得ています。

秋本先生はめっちゃすごい方ですが、秋本先生も、目標とするかっこいい先輩がいることが、よい刺激になっているのかなーと思いました。

わたしも、憧れる先輩は何人もいますが、自分自身がブレブレなので、もう少し方向性を定めたいなぁなどと、読みながら思いました。

まとめ

と、「わたしもそう思う!」とか「わたしはこうだなー」とか、いろいろ考えながら読める本でした。

欲を言えば、「仕事術」というタイトルである以上もう少し具体的な仕事術まで言及されたらよかったなーと思いますが・・・。
あと、もっとワガママを言えば、秋本先生の仕事場の写真とかも見たかったかな。

わたし、人の仕事場とか、バッグの中身とか見るのが大好きなんですよね。
だからNHKの「漫勉」とかめっちゃ好きでした。

この本がめっちゃ売れて、第2弾とか出ることがあれば、そのへんに踏み込んでもらえたら超うれしいです。

あと、この本を買ったときに不満だったのが、書店での売り場。

分類が「アニメ技法書」って……。
店員さん。売る気ある???

アニメや漫画のコーナーに置くのは全然いいんですけど、いやいや、ビジネス書の売り場に置こうよ!!
最近たまたま複数の大型書店に行ったけど、ビジネス書系のコーナーは相変わらずホリエモンとかDaiGoとかばっかりやん(いずれも好きですけど)。

ビジネス書のコーナーに置くだけで、売れ行きは全然違うはず。

わたしは、もっと秋本先生の仕事術や考え方について読みたいので、この本がガンガン売れて、2冊目以降の出版も決まってほしいなぁと思う次第です。